日本におけるクジラ、イルカの現状
日本においてクジラ、イルカは、他の魚類と同じように海洋資源として扱われています。
2019年に日本政府は国際捕鯨委員会(IWC)から脱退して、商業捕鯨(大型鯨類)を再開しました。
再開した理由は、日本の伝統を守るためということです。
また、イルカ漁も和歌山県・太地町をはじめ、日本各地で続けられています。
クジラ、イルカは人間によって日々、殺され続けているわけです。
これは、クジラ、イルカを愛する私たちとしては堪えられません。
2019年の商業捕鯨再開の頃からは、捕鯨やイルカ漁について、日本でもメディアで取り上げられるようになり、ネット上では様々な議論が行われていますが、捕鯨やイルカ漁は伝統だから守るべきだという声が大きいように思います。
クジラ、イルカは人間と同じ哺乳類でありながら、動物愛護法も適用されず、イルカ漁や捕鯨方法も改良されているとはいえ、クジラ、イルカは苦しみながら殺されているのが現状です。
日本では、霊的に進化した存在を残酷なやり方で殺しているのです。
商業捕鯨の4つの分類
現在日本において操業されている商業捕鯨は、4つに分類されるそうです。
1.大型捕鯨業(大臣許可漁業)
国際捕鯨委員会(IWC)が規制対象としている大型のクジラの捕獲対象は以下となります。
シロナガスクジラ、ナガスクジラ、ホッキョククジラ、セミクジラ、タイセイヨウセミクジラ、ミナミセミクジラ、コセミクジラ、イワシクジラ、マッコウクジラ、ザトウクジラ、コククジラ、ニタリクジラ、ツノシマクジラ、ミンククジラ、クロミンククジラ、キタトックリクジラ、ミナミトックリクジラ
2019年に、日本政府が国際捕鯨委員会(IWC)を脱退して、日本近海(領海とEEZ)での商業捕鯨を再開しました。
日本で捕獲を再開したのは以下の3種です。
ミンククジラ、ニタリクジラ、イワシクジラ
捕鯨業には、母船式捕鯨と基地式捕鯨があります。
母船式捕鯨は、クジラを捕獲する捕鯨船(キャッチャーボート)と捕鯨母船が船団を組んで操業を行い、捕鯨母船上で捕獲したクジラを解体、処理します。
南極海での操業はこちらとなります。
山口・下関が母船式捕鯨の母港と位置付けられています。
それに対して、 基地式捕鯨は陸上のクジラ処理場を基地とします。
農林水産大臣から許可されているクジラ処理場の基地が、以下の5つにあります。
北海道・網走、北海道・函館、宮城・石巻、千葉・南房総、和歌山・太地。
捕鯨船(キャッチャーボート)は、口径90mmほどの捕鯨砲を船首に装備し、クジラの動きに合わせて船速、方向転換を柔軟に行えます。
母船式捕鯨の捕鯨船は800トン型、基地式捕鯨の捕鯨船は200~350トン型。
捕鯨砲は、火薬の爆発力によって船とロープでつながれた銛(もり)を発射し、クジラに命中させます。
人力で操作、照準し、弾道が直線に近い平射弾道によってクジラに銛を命中させます。
発射された銛は、鋳鋼製で先端部の空洞に火薬が入っていて,クジラに命中すると爆発し銛爪が開き、クジラに貫入して、銛が抜けなくなります。
近年は電気銛が開発され、クジラに不要な苦痛を与えず即死させるよう、命中とともに銛に高圧電流を流してクジラを感電死させます。
しかし、クジラの遊泳速度は種類によってはかなりの高速であり、更に潜行と浮上を繰り返すため、的確に命中させることは捕鯨砲にかなりの熟練が必要です。
更に、1発目でクジラの急所であり、クジラの利用価値を損なわない部位に着弾させる必要があるため、高い技量が要求されます。
しかし、1発目でクジラが死なない時は直ちに2番銛が装てんされて発射され、稀には2番銛が命中してもなお死なず、3番銛・4番銛を撃つこともあるそうです。
その間、クジラは苦しむことになります。
捕獲したクジラは、ロープをたぐり寄せて、船に回収します。
2.小型捕鯨業(大臣許可漁業)
口径50mm以下の捕鯨砲(または捕鯨銃)を装備した総トン数50t未満の捕鯨船(キャッチャーボート)で操業する。
根拠地は北海道・網走、北海道・函館、宮城・鮎川、千葉・和田、和歌山・太地。
捕獲対象は以下となります。
ツチクジラ、コビレゴンドウ(タッパナガ・マゴンドウ)、オキゴンドウ
捕鯨船(キャッチャーボート)、捕鯨砲については上記をご参照ください。
3.追込み漁(知事許可漁業)
船の集団でクジラ、イルカの群を湾内に追い込み,魚網で湾口をふさいで、更に入り江や浜辺に追い込んで捕獲。
捕獲対象は以下となります。
コビレゴンドウ、オキゴンドウ、ハナゴンドウ、スジイルカ、カマイルカ、マダライルカ、バンドウイルカ
許可が与えられているのは静岡県・和歌山県ですが、近年静岡県では操業実績はないそうです。
和歌山・太地のクジラ、イルカ漁は、イルカ類は毎年9月1日から翌年2月末日まで、ゴンドウ類は毎年9月1日から翌年4月末日まで行われます。
イルカ追い込み漁の様子(出典:AFPBB News)
クジラ、イルカ漁の目的は、鯨肉販売と生体販売の2つです。
鯨肉販売は、和歌山・太地で古式捕鯨が始まって以来の伝統があります。
それに対して、追い込み漁で生きたまま捕獲されたクジラ、イルカは水族館向けに販売され、その収入は鯨肉販売よりもかなり大きなものとなります。
追い込み漁は、数隻の船団で出航して、まず小型鯨類の群れを肉眼、そして双眼鏡を用いて探します。
小型鯨類の群れに接近すると、漁師たちは金属性の棒をたたいて海中で鳴らします。
小型鯨類は音を嫌って、逃げるので、その習性を利用して、湾内に追い込みます。
小型鯨類が湾内に入ると逃げられないように湾の入り口を魚網で素早く閉じます。
小型鯨類が落ち着くのを待って、翌日以降に捕獲作業が行われることもあります。
捕獲は、湾内で囲っていた小型鯨類を、漁船で水深数十センチほどの海岸まで、捕まえやすいように追い込みます。
そして、ウェットスーツを着た漁師が浅瀬に入り、鯨肉販売にする小型鯨類と生体販売にする小型鯨類を選別します。
小型鯨類の購入希望者は、岸近くまで追い立てられた個体の中から性別、サイズなどをもとに希望する小型鯨類を選び、傷の有無等を確認します。
そして、購入が決まった小型鯨類は胸びれ用の穴があいた専用の担架に載せられて、トラック等で輸送されます。
残った小型鯨類は、鯨肉販売のために尾びれにロープを掛け、このロープを岸に張った長い綱に固定し、小型鯨類の動きを抑えます。
そして、動きの鈍った間合いを見て小型鯨類を絶命させます。
以前は、首を切開する方法が採られていましたが、小型鯨類に苦痛が多いとの批判を受けて、2000年以降はフェロー諸島で用いられているのと同じ、頸椎に金属ピンを刺す方式が導入されました。
この方法は、銛に似た屠殺道具を呼吸口の後ろから脊髄に突き刺し、脊髄をねじ切るもので、苦痛の少ない”人道的”な殺害方法とされています。
しかし、小型鯨類が体を痙攣させて、苦しんで死んでいく姿の動画があります。
生体捕獲が本格的に再開したのは1969年以降です。
和歌山県でのイルカの追い込み漁は、日本の水族館の有力なイルカの入手先であり、また捕獲されたイルカは海外16か国にも輸出されてきました。
2015年には、太地で生体捕獲されたイルカの半数が、中国や韓国やロシアなどに輸出され、各地の水族館での需要を支えている実態が報告されています。
中でも中国へは2015年までの5年間で200頭以上が輸出されました。
生体捕獲されるイルカの全てが動物園や水族館向けとされます。
4.突きん棒漁業(知事許可漁業)
船に寄って来たクジラ、イルカに銛を突き刺して捕獲。
捕獲対象は以下となります。
イシイルカ、リクゼンイルカ、スジイルカ、バンドウイルカ、アラリイルカ、ハナゴンドウ、マゴンドウ、オキゴンドウ
許可が出されているのは以下の都道府県です。
北海道、青森、岩手、宮城、千葉、静岡、和歌山、沖縄。
イルカは、船首が起こす波に乗るために、遊びに来ます。
漁師は、船首から飛び出た台に乗り、イルカの背中めがけて銛を突き刺します。
逃げるイルカを追いかけて行って刺す場合もあります。
銛の構造として、銛先が体に食い込み、抜けないようになっています。
イルカは逃げようとしますが、苦しみながらも力尽きて死にます。
銛に電気を流し、感電死させる場合もありますが、すべてのイルカに電気を流して殺すのかは不明です。
銛先につなげたロープに浮きをつけ、イルカを放置して、ほかのイルカを追って、また銛を刺します。
この手順を繰り返し、最後に浮きと捕獲したイルカを回収します。
日本におけるクジラ、イルカ捕獲の歴史
日本各地の海辺の貝塚や遺跡などからイルカの骨が発見されているので、縄文時代からイルカは食べられていたことがわかっています。
クジラ、イルカの骨が大量に出土したり、文献などから、中世においてもクジラ、イルカを食料として捕獲していたことがわかっています。
和歌山・太地は、古式捕鯨の誕生の地であり、400年程の捕鯨の歴史があり、クジラを食す習慣がありました。
昔はたんぱく源が不足していたので、クジラ、イルカが貴重なたんぱく源だったということです。
しかし、今は他のたんぱく源もたくさんあり、クジラ、イルカを捕獲しなければいけない必要性はなくなりました。
伝統として続けなければいけない理由は、今はないのではないでしょうか。
日本政府は、クジラの頭数が十分にいるという調査結果を捕鯨を続ける根拠に挙げます。
(政府は、「鯨類の持続的な利用の確保」「十分な資源が存在することが明らかになっている大型鯨類」という表現をします。)
しかし、頭数が多いからと言って、クジラ、イルカを殺すことは殺人と同じであり、あってはならないことには変わりありません。